著者 紹介

大熊 裕哉

新潟県新潟市

おおくま鍼灸マッサージ治療院

URL

http://okumachiryouin.com

 

足陽明胃経経穴凡四十五穴 左右合わせ九十穴

 

承泣、四白、巨髎、地倉、大迎、頬車、下関、頭維、人迎、水突、気舎、缺盆、気戸、庫房、屋翳、膺窓、乳中、乳根、不容、承満、梁門、関門、大乙、滑肉門、天枢、外陵、大巨、水道、帰来、気衝、髀関、伏兎、陰市、梁丘、犢鼻、足三里、上巨虚、条口、下巨虚、豊隆、解谿、衝陽、陷谷、内庭、厲兌

 

承泣(甲乙経より)目下七分。上に瞳子に直るに在り。鍼一分。灸三壮。赤眼熱痛を治す。

 

四白(甲乙経より)目下一寸。鍼三分。頭痛、目眩、眼白翳を生ずるを治す。又、目潤い動じて息せずるを治す。灸可七壮。

 

巨髎(甲乙経より)鼻孔を挟み傍に八分に在り。鍼三分。銅人経に曰く灸七壮。歯痛を治す。

 

地倉(甲乙経より)口吻を挟む傍四分に在り。動脈手応ず。鍼三分。灸七壮。偏風目眼歪斜、水漿漏落を治す。

 

大迎(甲乙経より)曲頷の前へ一寸三分。骨罅(ひび)陥中動脈に在り。鍼三分。灸三壮。寒熱頚痛、唇吻瞤(ピクつく)動じて止まず、舌強ばって言うことできず、目痛んで閉めること得ず。霊枢に曰く下歯齲(虫歯)するものは大迎に取る。

 

頬車(甲乙経より)耳下曲頬の端、陥中に在り。鍼四分。灸七七壮。牙関(破傷風時の咬筋の硬直)開かず、頸強張って回し振り向くこと得ず、牙齒疼痛を治す。

 

下関(霊枢より)客主人の下。骨下陥中に在り。口を合わすれば空有り。口を開ければ則ち閉じる。鍼灸は前に同じ。耳鳴、口ワイ(口+咼、歪の意)、虫歯痛を治す。銅人経に云く、牙齗(歯茎)腫痛を三棱鍼で血を出す。

 

頭維(甲乙経より)額角髪際、本神の傍一寸半、神庭の傍四寸半に在り。は灸三壮。頭疼き破るが如く、目痛み脱するが如きを治す。

 

人迎(素問より)一名は五会(甲乙経)結喉傍一寸半。大動脈に在り。鍼灸を禁す。按ずるに尸厥(突然の昏睡)に鍼するに三棱鍼を以て。

 

水突(甲乙経より)直人迎の下、気舎の上、二穴の之中に在り。鍼三分。灸三壮。短気喘息、臥すること得ずを治す。

 

気舎(甲乙経より)直人迎の下、骨尖上缺陥に有るに在り。鍼灸下の膺窓に至って並び前に同じ。瘤癭(首周りのコブ)、喉痺、咳逆上気、肩腫頚強を治す。

 

缺盆(素問より)肩下横骨の陥中に在り。鍼三分。灸三壮。喘息、息賁、胸満、瘰癧、缺盆中痛むを治す。

 

気戸(甲乙経より)巨骨の下、兪府を侠て傍二寸。中行を去ること四寸に在り。下の乳根に至って皆同じ。胃肋痛、支満喘急を治す。

 

庫房(甲乙経より)気戸の下一寸六分に在り。呼吸不利胃痛を治す。

 

屋翳(甲乙経より)庫房の下一寸六分に在り。膿血を唾す、胃肋痛を治す。

 

膺窓(甲乙経より)屋翳の下一寸六分に在り。乳癰、寒熱、胃肋痛を治す。

 

乳中(甲乙経より)即ち乳頭上。鍼灸を禁ず。

 

乳根(甲乙経より)乳下一寸六分に在り。胃復満痛、霍乱(日射病)転筋を治す。鍼三分。灸三壮。一に云く壽世保元(中国明代の龔廷賢の著書)には居家に必ず用いた。女人は即ち乳頭を屈してこれを度る乳頭齊しき処それが穴となる。

 

不容(甲乙経より)幽門の傍一寸半に在り。巨闕に対して中行を去ること二寸。下の気衝に至って皆同じ。鍼一寸。灸五壮。腹満、痃癖、腹鳴、疝瘕、嘔吐、胃背相引いて痛む、心下悸す、黄疸、膈噎、胃脘痛を治す。按ずるにこの穴は隔膜の拘急を緩ます。鍼一寸五分。留め二十呼吸。微に動かし左手を揺らす。鍼をして活動せ令に、鍼して胸膜快潤を覚える。先ず脈を診て数脈を得るが如きは、鍼して再び診れば却って遅し。先ず脈を診て沈脈を得るが如きは、鍼した後に再び診れば却って浮く。余、数々試して数々験あり。

 

承満(甲乙経より)不容の下一寸。鍼灸前に同じ。腹脹、飲食下らず、黄疸、腹中雷鳴、切痛下痢を治す。或いは灸五十壮に至る(千金方)

 

梁門(甲乙経より)承満の下一寸。鍼灸前に同じ。妊婦は灸を禁す。癥瘕

(腹腔内の腫塊)、胃脇痛、積聚、腹中動及び塊有る、大腸滑泄を治す。

 

関門(甲乙経より)梁門の下一寸に在る。鍼灸治は前に同じ。

 

太乙(甲乙経より)関門の下一寸に在る。鍼灸治は前に同じ。或いは云く臍を繞って切痛を治す。

 

滑肉門(甲乙経より)太乙の下一寸に在り。天枢の上二寸半。鍼灸治は前に同じ。

 

天枢(脈経より)平臍膏兪の傍一寸五分に在り。鍼一寸。灸五壮。銅人経に云く。百壮。千金方に云く。妊婦に灸すべからず。脚気上衝、霍乱嘔吐下痢止まらず、臍を繞って絞痛する、大便難、腹盤の如く潰疝、五淋、小便不利、婦人の月事調わず、癥瘕(腹腔内の腫塊)、吐血、狂言、子宮久しく冷えて子無しを治す。按ずるに不溶に従うより、この穴に至って皆腹痛の諸症を治すなり。腹痛に三種有り。鍼刺して二、三分をして治す者有り。六、七分をして治す者有り。寸余すにして治す者有り。病浅く、鍼深くすれば則ち痛楚、益す。病深く、鍼すること浅ければ則ち邪益し王す。

鍼科深浅を察し愼んで逆治すること無かれ宜しくなり。

 

外陵(甲乙経より)天枢の下一寸に在り。鍼一寸。灸五壮。下同じ。癪疝少復満を治す。

 

大巨(甲乙経より)天枢の下二寸に在り。驚悸して眠れず、小便不利を治す。按ずるに外陵、大巨の四穴は主に男子の無嗣を治す。若し男子少腹筋攣して緩豊とらず毎に疝瘕を苦しむは則ち交接の時、精、子宮に射して能わずるなり。嗣を求める人。毎にこの四穴に於いて或いは鍼し或いは灸すればなんじ久しくして少腹の寛解を覚える。以て熈熈(きき:やわらぎ楽しむさま)のこれ台に登っては則ち鳳雛龍卵決して得難からんや。

 

水道(甲乙経より)大巨の下二寸に在り。鍼一寸半。灸五壮。大便小便閉、疝気偏墜、婦人の腹腫、子宮の諸疾を治す。

 

帰来(甲乙経より)水道の下二寸に在り。鍼一寸。灸五壮。奔豚九疝、陰丸上縮し腹に入って引痛する、婦人の血閉積冷を治す。

 

気衝(素問より)帰来の下鼠径の上一寸。大動脈に在り。鍼灸禁す。按ずるに凡そ動脈上。多くは鍼灸を禁す。小動脈の如き絶してその脈を按じそしてそれに鍼す。大動脈の如きは、古人鍼灸法が有るといえども禁絶が宜しい。

 

脾関(甲乙経より)膝上、伏兎の後ろ一尺二寸に在り。鍼六分。灸三壮。腹痛、鼓腫、癥瘕、寒疝、中風、半身不随を治す。

 

伏兎(甲乙経より)膝上七寸。起肉伏兎の如きに。鍼五分。禁灸。按ずるに、この穴、千金では脚気八所の一つ。諸書に灸禁。恐らく誤り。今は従わずなり。寒疝、風労、気逆、膝冷、脚気、行歩正しからずる、腹満胃痛、中風半身不随を治す。或いは云う。狂い邪鬼語る。灸数百壮。

 

陰市(甲乙経より)膝上三寸に在り。拝してこれを取る。鍼五分。灸七壮。寒疝、少腹痛、脹満して腰已み下寒痺。水腫大腹を治す。

 

梁丘(甲乙経より)膝上二寸。両筋間に在り。鍼三分。灸三壮。脚膝痛を治す。髀関よりこの穴に至って半身不随を療するの要穴なり。

 

犢鼻(霊枢より)膝髕の下䯒骨の上隠中に在り。鍼三分。灸七七壮。膝中痛不仁し跪き(ひざまずき)起きし、膝髕癰腫を治す。鍼するこの穴及び膝眼に先ず熨むして(伸ばして)後にそれを刺す熨方(伸ばし方)。

桂枝一匁、干姜一匁、山椒一匁、鳥頭一匁 この四味、水四合を以って、煎って二合を取り、先に熨して、そうしてこれを鍼す。後に再び熨なり。

膝眼四穴(千金より)膝蓋の下、䯒骨(脛骨上端)の上。大筋の両傍に在り。脚気、水腫、脚膝沈重、起坐行歩正しからずを治す。鍼一寸。灸七七壮。

 

足三里(素問より)膝眼の下三寸に在り。䯒骨(脛骨上端)の外廉を去ること一寸。両細筋の間。鍼一寸。灸七七壮。小児灸を禁す。灸を秦承祖(南北朝時代の医家)いわく諸病みな治す。あるいわく、五労七傷を療す。按ずるに足部の病みな療す。この穴または逆気を下す、外臺(外台秘要)いわく人年三十より上は、もしこの穴に灸せずれば、気上って目を衝き眼を使いしむに光無から。蓋しその気を下すことを以て能すなり。

 

上巨虚(霊枢より)足三里の下三寸に在り。鍼一寸。灸七七壮。蔵気不足。偏風脚気。腸中切痛するを治す。

 

条口;條口(甲乙経より)上巨虚の下二寸に在り。鍼一寸。灸三壮。湿痺足下熱し、足緩まって収まらず、久しく立つこと能わざるを治す。

 

下巨虚(霊枢より)上巨虚の下三寸に在り。鍼一寸。灸七七壮。脚膝腫痛収まらず。胃中の熱。婦人の乳癌を治す。

 

豊隆(霊枢より)外踝の上八寸に在り。鍼一寸。灸七壮。癲疾。霍乱(コレラ)瘈瘲(きつじゅう 筋脉の牽引性拘急を瘈、弛緩し伸張するものは瘲)

腹中切痛を治す。席弘賦(南宋時代の鍼灸医 席弘の著した賦)に云く。もっぱら婦人の心痛を治す。

 

解谿(霊枢より)足腕の上、草鞋(わらじ)帯を繋ぐ所に在り。衝陽後ろ一寸半。動脉中。鍼五分。灸三壮。足腫。痛風。目眩。よく目翳(かすみめ)去る。風瘧。頭痛を治す。

 

衝陽(素問より)内庭上骨上動脉に在り。即ち跗陽脉。按ずるに平人、この脉動じないもの有り。鍼五分。灸三壮。霍乱嘔吐。偏風不随。腹満食嗜ず。寒熱足緩み履み収らず。

 

陥谷(霊枢より)大指、次指間本節後に在り。内庭去り二寸。瘧寒熱。腸鳴腹痛を治す。足附上血腫を治す。これ鍼で血を出す。

 

内庭(霊枢より)次指、三指間に在り。鍼三分。灸三壮。脚膝収まらず。寒痺不仁。転筋脚気。瘧の寒熱。狐崇を治す。按ずるに入門に云く足の痞根。即ちこの穴なり。大人、小児諸疾を療す。灸は数百壮に至る。

 

厲兌(素問より)次指外爪根角に去り韭葉の如しに在り。鍼一分。灸一壮。尸厥。寒痺不仁。