著者 紹介

大熊 裕哉

新潟県新潟市

おおくま鍼灸マッサージ治療院

URL

http://okumachiryouin.com

 

鍼灸説約

手陽明大腸経穴凡そ二十穴(左右合わせて四十穴)

商陽、二間、三間、合谷、陽谿、偏歴、温溜、下廉、上廉、手三里、曲池、肘髎、手五里、臂臑、肩髃、巨骨、天鼎、扶突、禾髎、迎香

 

商陽(霊枢より)塩指(示指)の内側に在り、爪甲角を去ること韭葉の如し。鍼一分。灸三壮。胃中気満。耳鳴。耳聾。歯痛。目盲を治す。

 

二間(霊枢より)塩指の内側、本節の前陥中に在り。鍼三分。灸三壮。

喉痺。鼻血。歯痛。口眼斜歪。飲食を通ぜずを治す。

 

三間(霊枢より)塩指の内側、本節の後ろ陥中に在り。鍼三分。灸三壮。

下歯の虫歯痛。嗜臥。腸鳴。洞泄。身熱。気喘。口乾。目急を治す。

 

合谷(霊枢より)大指と塩指の岐骨間に在り。動脈手に応す。(一名虎口。一名合骨)鍼三分。灸三壮。偏正頭痛。喉痺。痿臂。瘖して言うこと能ず。中風偏枯を治す。

 

陽谿(霊枢より)腕中の上側両筋の間陥中に在り。鍼三分。灸三壮。

狂言喜笑鬼見。驚掣。肘臂挙がらず。中風半身使えずを治す。

 

偏歴(霊枢より)腕後三寸に在り。鍼三分。灸三壮。痎瘧。寒熱。鼻血。癲疾多言。歯痛を治す。標幽賦に云う、小便利す。水虫を治す。

 

温溜(甲乙経より)腕後ろ六寸肉の郄(隙間)に在る。鍼五分。灸三壮。

狂言鬼見。口渦。腸鳴。臂痛み挙がらず。肩背強急。口舌腫痛を治す。

中風半身使わざるもの七日を出ずるに、この穴に灸すること七七壮。数百壮に至って奇効有り。

 

下廉(甲乙経より)曲池の下四寸。分肉の間、外斜めに在り。鍼灸、治効は温溜と同じ。

 

上廉(甲乙経より)曲池の下三寸に在り。鍼灸、治効は温溜と同じ。

 

手三里(甲乙経より)曲池の下二寸。兌肉の端に在り。鍼灸は温溜と同じ。或いは灸じゃ数百壮に至ること臂肘が攣れ屈伸するを得ずる。歯痛。頬顎腫れ。瘰癧(頸部リンパ節炎)。中風半身不随を治す。

 

曲池(霊枢より)肘の外輔骨。肘を曲げ骨の中に在り。手を胃に供してそれを取る。(一名鬼臣)鍼七分。灸三壮。一云う百壮。胃中煩満。瘰癧。喉痺。肘中痛み。偏風半身不随。婦人経水通じずを治す。千金に云う。悪気、諸癮疹を治す。灸は年壯に随う。本事方に灸に二百壮に至る

 

肘中(甲乙経より)肘の大骨の外廉隠中に在り。天井と相並んで興すと相去ること一寸四分。鍼三分。灸三壮。肘節風痺。麻木(しびれ)嗜臥を治す。

 

五里(霊枢より)肘上三寸に在り。裏に向かう大筋の中央。鍼五分。灸三壮。肘節風痺。痛風。臂痛攣急を治す。

 

臂臑(甲乙経より)肘上七寸 月+囷(肌肉突起部分)肉の端に在り。

鍼三分。灸三壮。一に云く。百壮に至ると中風で腕挙がらざる、頸項拘急を治す。千金に云く癭気(今でいうバセドウ病)を治す。灸を年壮に随う。按ずるに臑音脳(?)、聖惠方(太平聖恵方という古書)では臂脳と作られ又云う。肩髃の下、一夫。両筋の間(四指=一夫法を用いる)。

 

肩髃(甲乙経より)肩端の骨皹(ひび)に在り、腕を上げれば空有るに。鍼八分。灸三壮。七七壮に至る。癒えるを以て度と為す。中風偏風、傷寒で熱やまず、腕痛み力無く、筋骨酸疼(だるくうずく)、牙痛忍ぶべかずを治す。按ずるにこの穴妙に偏風不随を治す。一七日を出ずる、この穴及び肩髎、肩貞三穴に灸する。左は左に灸し、右は右に灸する。数百壮に至って肩端肉脱するの患い無し。数々試し、数々効あり。

 

巨骨(甲乙経より)肩端上行叉骨間に在り。鍼一寸半。灸三壮。下歯痛、肩腕屈伸すること得ずして痛む、驚癇、吐血、胃中瘀血あるを治す。

 

天鼎(甲乙経より)側頚直ぐ欠盆穴、扶突穴の後ろ一寸に在る。鍼三分。灸三壮。暴瘖(突然声がでなくなる。喉瘖)、気哽(気の詰まり)、喉痺、嗌腫食べることできずを治す。

 

扶突(霊枢より)曲頬の下一寸に在り。甲乙経に云う。人迎の後ろ一寸半。仰ぎてそれを取る。鍼三分。灸三壮。咳嗽唾多く、喉中が水雞(クイナという鳥)の如きを治す。

 

禾髎(甲乙経より)直に鼻孔の下に在り。水溝を挟むの傍五分。鍼三分。尸厥(厥証の一種。昏倒し意識をなくす)、口禁して開かずを治す。

 

迎香(甲乙経より)禾髎の上一寸。鼻孔の傍五分に在り。鍼三分。鼻が香り嗅ぐこと利かず、偏風口喎を治す。玉龍の賦に云う。よく眼熱の紅を消す。微その血を瀉す。按ずるに甲乙経では、禾髎、迎香、巨髎の三穴は灸法を闕く。