著者 紹介

大熊 裕哉

新潟県新潟市

おおくま鍼灸マッサージ治療院

URL

http://okumachiryouin.com

 

張景岳の十問歌

張景岳(明代)という医学者が著書の「景岳全書」という書物のなかで診察方法のひとつ聞診(問診)のやり方を記したもの。

 

治療を進めるうえで問診は、他の診察(脈や腹診)と合わせて証(治療の型)を決めるヒントが隠されている重要なポイントです。

10個の質問項目のことを「十問歌」という。

 

 

一に寒熱を問い、

二に汗を問う、

三に頭身を問い、

四に便を問う、

五に飲食を問い、

六に胸を問う、

七に聾を問う

八に渇を問う

九に旧病を問う

十に因を問う

 

一の寒熱は冷えているか、熱いのかを聞き、症状が陰証なのか陽証なのかを確認します。

 

二の汗は汗のかきかたを聞きます。ジワジワ汗がでるのか、寝汗をかくのか、無汗なのかで、水分の消耗具合や熱の多さを確認します。

 

三の頭身とは、頭の症状を聞いて体の上下での身体状態を把握します。またどこの経脈の病変なのか確認します。

 

四の便を問うは、小便と大便の出を聞きます。小便の出の良し悪しで腎・膀胱の状態を伺い、大便は便秘や下痢などにより寒熱の状態、大腸や胃の状態を伺う。

 

五の飲食を問うは、食欲や偏った食べ物好みを聞きます。食欲が亢進していれば胃熱、食欲が無ければ脾虚を考えられ、五味(酸苦甘辛鹹)という偏った味の食べ物は該当する蔵を補い働かすため、偏食により五臓の働きを伺う。

 

六の胸を問うは、胸に症状がないか、五臓では心肺が位置します。心肺の異常がないか確認します。

 

七の聾を問うは、聾は聴覚です。聞こえにくいのか、全く聞こえないか聴力の度合いを確認します。耳は腎の支配域(五官)となりますが、経脉では胆経、三焦経、小腸経も耳に行きます。

 

八の渇を問うは、口の渇きを聞きます。これは虚熱による症状です。どれくらい水分を取るかなども確認し熱の強さを伺う。

 

 

九の旧病とは既往歴を聞きます。体質や現病への影響を伺う。

 

十の因を問うは、発病の原因はあるか聞きます。顔面神経麻痺が風に当たったことや、胃痛は暴飲暴食してからなど、内因(五臓の不調)か外因(邪気の侵襲)なのか伺う。

 

以上が問診の重要ポイントです。主訴以外にも体の変化を気にすることで病気の原因に辿りつくことがあります。