著者 紹介

大熊 裕哉

新潟県新潟市

おおくま鍼灸マッサージ治療院

URL

http://okumachiryouin.com

 

五臓 - 肺 -

生理のまとめ

 

・肺は収を欲す「素問 蔵気法時論篇」

肺は五行では金に属し秋に旺する。秋は夏の盛んなった気を収める時期であるため、肺気にも収斂作用がある。

 

・肺は気を蔵す「霊枢 本神篇」

・諸気はみな肺に属す「素問 五臓生成篇」

肺は呼吸により天の気を収め、営衛の気を巡らせる。

 

・肺の声は哭、色は白、臭いは腥、味は辛い、魄を蔵す

気が停滞すると泣きたくなり、愚痴っぽくなる。皮膚が色白の人は体質的に肺虚が多い。腥臭いのは肺熱により痰が生じるため。辛味は肺気を巡らせて発散させる作用がある。

 

・志にありては憂となす「素問 陰陽応象大論篇」

五志(感情)では憂となる。憂(うれる)は心配や思い沈むような状態で内向きは肺の収斂作用が働いているのだろうか。愚痴が多くなるとも言われている。

 

・竅は鼻に開く

肺気が虚すと、鼻がつまったり、臭いは嗅ぎ分けれないような症状が出やすい。

 

・肺は身の皮毛を主る「素問 痿論篇」

肺は気を主り衛気を循らせる、衛気は脉外を循り、腠理の開闔に作用し、皮毛を温め、外邪の侵入を防ぐことから皮毛を主る。

 

・難経33難

肺は純金となす非なり。辛の商なり(辛は金に属し陰、商は五音の商と解釈)、丙の柔(丙は火に属し陽、柔は陰に属す)、大言すれば陰と陽、小言すれば夫と婦、その微陰を捨て、婚して火に就く、その意は火を楽しむ、また陽道を行くこと多し、故に肺をして水を得て浮かしむるなり。

 

「臓腑経絡詳解 岡本一抱子」


肺脉は右の寸に伺う。浮濇にして短かつ和緩を帯びるものは肺平なり。浮大にして洪なるものは心火来たりて肺に来す。治難し。

肺は金に属す。金の色は白し。金実する事則ち重くして浮かばず。虚すること則ち軽くして沈まず。故に丹渓(金・元時代 朱丹渓)の曰く白き者は肺気の虚と。然れども豚膏の潤すか如き者は白しろいえども良き兆し。胃の気を誘って肺気虚せずなり。その色は枯骨の如き者は胃の気を受けず、肺元の虚なり。治せず死す。

越人(扁鵲)の曰く胃の気少なきを病という。胃の気無しを死という。

肺金は脾土に養われ腎水を生し肝木を剋し心火に剋される。故に肺虚すること則ち腎水の不足し肝木有餘し心火高ぶるなり。その源脾土の不足に始まる。たしかに土堅きこと則ち金衰えず水疲れず、木侮らず、火高ぶらず。五臓安全である。

これに東垣(金元時代 李東垣)先生は内外傷弁、脾胃論の因て起こる所なり。

肺は気を主る。七情の気の病は皆肺に起こる。魄を蔵し皮毛を栄し肺病は皮毛に見られる。不仁頑麻(知覚障害)浮腫の煩うなり。

皮膚より入る者は肺を犯す。故に六淫外邪は喜んで先に肺をつく。秋に旺し肺病は秋に起こり、夏甚だしく冬に癒ゆ。西に位し右の脇に見られる。竅(あな)を鼻に開く。清涕は肺寒。肺虚なり。濁涕は肺熱。肺実なり。

辛味腥臭は肺に出入りし、熱と寒とを嫌って温を喜ぶ。

七情、五声、五音にあっては、憂、哭、商を主るなり。辛熱過ること則ち肺肝を傷り。口腥気を出しは肺熱なり。形寒し飮寒ことは則ち肺を傷るかつ又、暑熱も肺気を犯す。憂哭盛んなことは則ち肺を傷る。多く戈(ほこ)、刃を夢みる者は肺実なり。多く田や平原を夢みる者は肺虚なり。

 

・肺臓象

肺の臓象たる。脊の第三椎(身柱)に付着した八葉の蓮華の開けたるが如し。その葉は大葉六つ小葉ふたつ、総て八葉なり。大葉六つ三葉は胸に垂れ、三葉は背に垂れる。小葉ふたつは左右に分かれ垂れる。人の両耳にある形に似たり。故に四十二難曰く、肺の重さ三斤三両六葉両耳総て八葉と。この八葉,肩と背骨とに胸背左右の四方に下り、五蔵六腑の上を覆って蓋の如し。

九鍼篇曰く肺は五蔵六腑その蓋の者と言う。

病能論。肺は臓の蓋の者と言う。痿論に曰く肺は心の蓋の者と言う。肺の臓中。二十四の空竅有りて、例えば蜂巣の如し。人の呼(呼気)する則ち気が空(あな)を出て肺葉虚す。吸(吸気)則ち気が空より入りて肺葉補す。呼吸の出入り。

肺葉の消息、藁籥(たくやく:袋の中にクダをしかけて、火を吹きおこす道具)の如し。諸蔵清濁陰陽の気。従ってそれに周身に行列分布すなり。故に長双賓の曰く清濁の運化を司る為人身の藁籥という。

華佗が云う。中蔵経曰く、肺は魄の舎、主に気の原。あるいは華蓋と云う。また肺の象り蓮華の如く。五臓六腑の上を蓋う。故に華蓋と云う。或いは問いて曰く華蓋は肺を指して云う。師なんぞ四蔵六腑の華蓋と言わざるや。然なり、正蔵五つ肺心脾肝腎なり。正府五つ胃胆小腸大腸膀胱。合して十なり。思うに経絡配合はこれに加えるに三焦の一府。心包の一蔵を以って六蔵六腑。総て十二経とす。

今五臓の華蓋ろ云う者また経絡配合に従ってこれを云う。実に五臓の華蓋なり。十四経発揮曰く五臓の華蓋と為すと云う。また問いて云う。肺葉全て八つある者は何ぞや。肺は金に属す。金は少陰とす。(これの五行の陰陽配合なり。手の太陰と云う沙汰には非ず)

少陰の数は八つ。故に八葉なり。

 

 

 

 

肺の病証

 

「素問 蔵気法時論篇」

肺の病はぜりついたり咳をしてのぼせ、肩や背中が痛む。汗出て、臀部、陰部、下肢の前後から足背にかけて痛む。虚するときは、呼吸が浅くなり、十分にできない。耳が聞こえなくなり、のど渇く。

 

 「難経十六難」

肺脈を得れば、その外証は面白くよく嚔し、悲愁して楽しまず、哭かんと欲す。その内証は臍の右に動悸あり、これを按ずれば牢くして若しくは痛む。その病、喘欬、洒淅寒熱す。これ有るは肺なり、これ無きは非なり。

 

手太陰肺経 流注

 

「霊枢 経脉編」

 

手の太陰の脈は、中焦に起こり、下りて大腸を絡い、還りて胃口を循り、膈を上りて肺に属す。

肺系より横(中府、雲門)に腋下に出で、下りて臑内(天府、夾白)を循り、心経と心包経の前を行き、肘内(尺沢)を下り、臂内上骨(孔最)を循り、寸口(列缺、経渠、太淵)に入り、魚に上り、魚際を循り大指の端(少商)に出づ。

その支は腕後(列缺)より直ちに次指の内廉(大腸経)に出で、その端に出づ。