著者 紹介

大熊 裕哉

新潟県新潟市

おおくま鍼灸マッサージ治療院

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五蔵 - 肝 -

生理まとめ 

 

・肝は血を蔵す 「素問 調経論篇」

 

肝は脾より生成された血を貯蔵する働きがある。貯めた血は昼間は体の各所に送る。主に筋肉を栄養する。

 

肝の声は呼、色は青、臭いは臊、味は酸、魂を蔵す

「難経34難」

声は甲高くなり、イライラした物言い。顏全体または角膜が青くなる。血が粘り臊臭くなる。肝虚のときは酸味を食べるのがよい。酸味は収斂の気を盛んにする。

 

「臓腑経絡詳解 岡本一抱子」

肝は左関に候う。軟弱にして長。竿の抹消を掲がごときを肝の平とす。言うは弦にして新たに張る弓弦の如きは肝絶する。弦にして濇なる者は金邪来たりて肝に乗ず治し難し。弦にして洪大は心下反りて肝木に乗ず。それ子に来たりて母に乗ず。病むと雖も治し安し。

肝は木に属す。木の色は蒼し。蒼くこと如く蒼壁の澤き如く、翠羽の如き紺の縞翼の者は皆肝の生色なり。

青いこと藍如し者は胃の気を陽気に化を併せず皆肝の死色とす。

 

肝木は腎水に養われ心火を生じ脾土を克し肺金に克される。故に肝病で邪を成すれば則ち相火を挟みて金を侮り、脾を撃つ。

それを以って脾土を補助する者は先に肺気を堅くし制して土気を安ず。それ即ち鬱気をくじきて虚を助けることなり。

 

肝は血を蔵し、魂を舎し、筋を主る。爪は筋の余りなり。

筋は一身の骨節をまとう。筋急ならば則ち関節強し、緩き則ち関節収められず。その元は肝血の虚実に従う。

肝は春に旺す東に位す。竅(あな)を目に開く。涙は肝の液となす。酸味、羶(あぶらくさい)臭は肝に出入りし。燥を憎んで温潤を喜ぶ。

七情、五声、五音にありては努、呼、角を主る。故に酸味を食べ過ぎれば肝脾を傷める。口あぶらくさいは肝の熱で、怒りが盛んな者は肝の病なり。

 

難経33難

然り。肝は純木となすは非なり、乙の角なり(乙は木の属、角は東方に属す)、庚の柔(庚は金に属し陽、柔は陰に属す)、大言すれば陰と陽、小言すれば夫と婦、その微陽を捨てて、その微陰を吸う。その意は金を楽しむ(金の性質を感じる)また陰道を行くこと多し、故に肝をして水を得て沈めしむるなり。

 

肝の病証

 

「素問 蔵気法時論篇」

肝病は両の脇下痛みて少腹に引き、人をしてよく怒らしむ。虚するときは目こうこうとして見るとこなく、耳聞くとこなし。よく怒るひとのまさにそれを捕らえよんとするが如し。気逆するときは頭痛し、耳聾して聡ならず、頬腫る。

 

「霊枢 経脈篇」

外邪が本経を侵して生ずる病証は、腰痛して俛仰することできなくなり、男子は疝を病み、婦女は少腹部の腫脹を患うなどある。病が重くなると咽喉が乾き、顔色が暗灰色となって光沢が無くなる。本経が主っている肝蔵によって生ずる病変は、胸中が満悶し、嘔吐気逆し、穀物が消化しないで下痢し、狐疝し、痿溺あるいは小便不通となるなどある。

 

「難経十六難」

肝脈を得れば、その外証はよく潔くし、面青く、よく怒る。その内証は臍の左に動悸あり、これを按ずれば牢くして若しくは痛む。その病は四肢満し、閉癃して洩便難く、轉筋す。これ有るは肝なり。これ無きは非なり。

 

足厥陰肝経 流注

 

「霊枢 経脉篇」 

 

肝、足の厥陰の脈は、大指の叢毛の際(大敦)に起こり、上りて足跗の上廉(行間、太衝)を循り、内踝を去ること一寸(中封)、踝を上ること八寸(三陰交、蠡溝、中都)、太陰の後ろに交わり出で、膕の内廉(膝関、曲泉)を上り、股陰(陰胞、足五里、陰廉)を循り、毛中に入り陰器を過ぎり、小腹に抵り(曲骨、中極、関元)、胃を挟み、肝(章門)に属し胆を絡い、上りて膈(期門)を貫き、脇肋に布き、喉嚨の後ろに循り、上りて頏顙に入り目系に連なり、上りて額に出で、督脈と会す。

その支は、目系より、頬裏に下り唇内に循る。

その支は、また肝より別れて膈を貫き、上りて肺に注ぐ。