「てんかん」はてんかん発作を繰り返す脳の病気で、年齢、性別、人種の関係なく発病します。健康を維持する目的で設立された世界保健機関(WHO)では、てんかんは「脳の慢性疾患」で、脳の神経細胞(「ニューロン」と呼びます)に突然発生する激しい電気的な興奮(「過剰な発射」と表現されています)により繰り返す発作(てんかん発作)を特徴とし、それに様々な臨床症状や検査の異常が伴う、と定義されています
「てんかん発作」の時の症状は、大脳の電気的な興奮が発生する場所によって様々です。たとえば、いわゆる「けいれん」と呼ばれる手足をガクガクと一定のリズムで曲げ延ばしする間代発作や、手足が突っ張り体を硬くする強直発作、あるいは非常に短時間の意識消失が突然起こる欠神発作、全身や手足が一瞬ピクッとするミオクロニー発作、感覚や感情の変化、特殊な行動などいろいろな症状があらわれる複雑部分発作など、その症状は極めて多彩です。
ただし、発作の症状は患者さんごとにほぼ一定で、同じ発作が繰り返し起こることが、てんかんの特徴です。また、発作を起こしている最中は脳の中の電流が乱れているため、脳波を測定すると異常な波(棘波・きょくは)があらわれ、てんかんの診断に用いられます。
【原因】
てんかんの原因は人によって様々ですが、大きくは症候性てんかんと特発性てんかんに分けれます。
<症候性てんかん>
脳に何らかの障害や傷があることによって起こるてんかん
例)生まれたときの仮死状態や低酸素、脳炎、髄膜炎、脳出血、脳梗塞、脳外傷
<特発性てんかん>
様々な検査をしても異常が見つからない原因不明のてんかん
【発症年齢】
乳幼期から高齢期まで幅広く発病しますが、3歳以下の発病が最もおおく、80%は18歳以前に発病すると言われています。
しかし近年、人口の高齢化に伴い、高齢者の脳血管障害などによる発病が増えてきています。
全般発作
■強直間代発作
(大発作、意識喪失とともに全身を硬直させ(強直発作)、直後にガクガクと全身がけいれんする(間代発作))
■単純欠神発作
(数秒から数十秒の突然に意識消失し、すばやく回復する)
■複雑欠神発作
(意識障害にくわえて他の症状、自動症やミオクロニー発作などを伴う)
※自動症(舌なめずり、揉み手、一見目的にかなった行動をする)
※ミオクロニー発作(体を一瞬ビクっとさせるものから意識消失して倒れるものまで様々)
■点頭発作
(全身の筋肉の緊張が高まり、頭部前屈、両手を振上げる、両脚の屈曲という形をとる)
■脱力発作
(全身の力が瞬時になくなって崩れるように倒れる)
東洋医学考察
現代中医学では、癲癇(てんかん)が形成される要因は
①先天的な要因
②七情(精神面・気持ち)の失調
③脳部の外傷
④過度の疲労などによる臓腑の弱り
⑤痰(たん)
①は黄帝内経 素問 奇病論篇(47)で母の腹中にいるときに得る。胎病と呼ぶ。
②は内傷で心神の働きが阻害
③気血が凝滞し、脳と内臓の気が連絡しなくなることが癲狂(てんきょう)の発生の原因である
④極度の陰気不足となり腎虚から心腎不交証により癲癇となる。難経の二十難では「重陽のものは狂し、重陰のものは癲す」とあり、癲と狂は陰陽のバランスを著しく失った状態である
⑤『丹渓心法(たんけいしんぽう)』では、
「癇(かん)の発生は、すべてが痰や涎の集積や詰まりによって心竅(心の気機が通じる穴)を迷悶せしめたものである」
清の時代の『読医随筆(どくいずいひつ)』では、痰の凝結と瘀血によって心気が塞がれば、神機を停滞させて癲(てん)が発生する
黄帝内経 霊枢 癲狂篇
医者はこれを表情や顔色で判断するのである。
治療では手の太陽経、陽明経、太陰経に治療穴を取り、血(けつ)が動くと発作が治まる。癲癇の発作が始まって、口角がひきつれ、涙を流しながら声を出して、呼吸困難で動悸がする場合は手の陽明経、太陽経を診る。
経の左側が強ければ右側を刺鍼し、右側が強ければ左側を刺鍼して、血(けつ)が動くと発作が治まる。
経穴
督脈:脊中、脳戸、強間、百会
胆経:天衝、完骨、本神、脳空、風池、陽交
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